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某携帯会社のCMに影響を受け、妄想を思わず形にしてしまったif設定。
光が謙也のケータイになってますのでご注意を。 朝という時間帯は大抵慌ただしいもので少しでも気を抜けばあっという間に予定の時間を過ぎてしまう。 着ていく服や、提出するべきレポートのこと。今日は学校へ向かう前に借りていた本を友人へ返す必要がある。 電車の発車時刻も気にしなければいけない。そうやって一日の始まりにあれこれと考えを巡らせていれば、もう駄目だ。 バタバタと騒々しく支度をしなければとてもじゃないが朝の時間に余裕を持てない。 鞄に荷物を詰め込み、壁掛けの時計で時刻を確認する。 今日は普段よりも早めに支度を終えたため、時計の針は出掛ける時間の三十分前を指し示していた。 今日はええ感じやな。 余裕があることを知った頭で天気を確認しようとテレビのリモコンに手を伸ばすと、唐突に背後から静かな気配を感じた。 おかしいと思い振り返ろうとした瞬間、背中を遠慮ない力で叩かれ不覚にもぐらりとよろめいてしまう。 「何すんねんお前。危ないやろ」 文句を零しつつ振り返れば、そこにはあからさまに機嫌の悪い見慣れた姿がある。 どこかむっとした、ある意味ではデフォルトに近い表情に愛想とものは存在しない。 普段と変わったところはほとんどないと言っていいだろう。 ただ、一つだけおかしい点といえば、 毎日のようにぶつけられる毒舌が今朝は一度もその口から飛び出していないということだ。 「もしかして、マナーにしたままやったか?」 はっと気付き問い掛けると表情の変化が乏しい顔に今さら気が付いたか、 とでも言いたげな色がありありと浮かび上がる。そういえば、今朝はアラームが鳴らなかった。 就寝が早かったために寝過ごすことは免れたが、下手をすれば完全に遅刻が決定していただろう。 そう思うと、今になって心臓がざわりと騒ぐ。 さっと操作し、マナーモードを解除する。 大きな変化の見えない表情でゆるりと瞬いたかと思うと、 それは開口一番に「気付くん遅過ぎますわ」と呆れたように呟いた。 「しゃーないやろ。昨日レポート仕上げるのに集中して、」 「ついマナーから戻すの忘れとった、っちゅーことですか。頭の容量足りてへんのとちゃう?」 「朝から絶好調やな、電源切ってもええんやで」 「それで困るんは誰やと思ってます?」 何というか、毎朝この調子なのだ。機能としては申し分ないというのに、 その扱い難さはとんでもないもので度々手を焼く羽目になる。 愛着湧きそうやな、と適当に笑う友人を何度恨めしく思ったことか。 しかし、その言葉を否定したことは思えば一度もない。つまりはそういうことになるらしい。なぜか、溜息が零れた。 「…あぁ、言い忘れるとこやった」 まともに相手にしては言い負かされるのがオチだろう。 さっさと天気を確認してしまおうとテレビの電源を入れたその時、 やけに面倒臭そうな口調が耳に飛び込んでくる。 それは心なしか不穏な色を湛えているような気がして、嫌な感覚が背後に張り付いた。 振り向いた先にある顔には面倒という言葉が如実に表れていた。 はっきりとしたことは分からないが、言いたいことがあるなら簡潔に話してほしいと思う。 その性格からして、おそらく簡潔過ぎる答えが飛び出してくるのは間違いないのだろうが。 「電池、昼まで持ちそうにないっすわ」 「はっ?」 「昨日充電するの忘れるからや。ついでに、十五分前と五分前に白石さんから電話掛かってきてますけど」 「ちょっ、それをはよ言え!」 どうでもよさそうに話すから、思わず聞き流してしまうところだった。 慌てて画面を確認すると五分前には留守電が入れられている。 内容は乗る予定だった時刻に発車する電車が大幅に遅れ、ダイヤが乱れそうなため急いだ方が良いという内容だった。 嫌な汗が背筋を伝う。正直、間に合う気がしなかった。 「あかん、急ぐで!」 「充電は?」 「アホかっ、そないな時間ないねん!」 「……まぁ、ええですけど」 戸締りを忘れるわけにはいかず、部屋中を回り全ての窓を閉めていく。 あまりに慌ててしまい、テーブルの脚に小指をぶつけたがここで蹲っている暇はなかった。 ジクジクと疼く痛みに耐えている背後で「自業自得や」、と小さく鼻で笑う声が聞こえた。 |